オピニオン
もうひとつのM&A考
「合併は楽しいよ」。三菱ケミカルHDで「3度目」の合併体験となる三菱ウェルファーマの小峰健嗣社長は、冗談交じりにそう語り、同グループへのさらなる参画を呼び掛けた。楽しいかどうかは別にして、現在、国内の製薬企業でM&Aを真剣に考えない経営者はいないと言われるのは事実だ。
合併を繰り返し、世界最大の製薬企業の地位にまで上り詰めたファイザーの元幹部は、「合併で会社が大きくなるたびに、社員の士気が高まり、社内に勢いが出た」と、往時を振り返る。「合併でもっとも大切なのは、やはり相手との“肌合い”」(大日本製薬・藤田尚副社長)という、いかにも日本的な声は当然、あるにしても、上述の三菱の小峰社長のように、生き残りのために再編を前向きに捉える思考転換が、これからの経営者には必須といえるかもしれない。
ただ気になるのは、「メガ・ファーマ」や「スペシャリティ・ファーマ」といった、厚労省が作り出した造語を目標として掲げる企業が最近、やけに目に付くことだ。「医薬品産業ビジョン」は、国の護送船団行政放棄の「宣言」に他ならない。その意味から言えば、「規模追求だけが生き残りの手段ではない」(武田薬品・武田國男会長)、「独自のグローバル展開を目指す」(エーザイ・内藤晴夫社長)、「創薬においては、スケールメリットは働かない」(協和発酵・松田譲社長)など、国が(勝手に)描いた「カテゴリー」を拒んで独自の路線を貫く経営者がいることは、一方では頼もしい限り。経済課に合併を促されるいわれなどないのだから。
(2005年7月22日掲載)
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