オピニオン

平等か幸福追求か

 「東大公共政策大学院医療政策実践コミュニティー」、患者、医療関係者、弁護士などで作る「患者の権利法を作る会」、疾患横断的な患者会で構成する「患者の声を医療政策に反映させるあり方協議会」の3団体はこのほど、医師会や政党を招いて、医療基本法制定に向けた勉強会を開催した。3団体が求める医療基本法の骨子は、「医療提供体制の充実」「財源確保と国民皆保険制度の堅持」「国民参加の意思決定」など6項目。医療基本法は、医療版の憲法と言えるもので、医療法などの上位に位置し、医療の理念、グランドデザインを示す。これまでも患者の権利を明文化しようとして実現に至らなかった経緯があるが、今回の主張は、患者、国民の責務も明確にすべきとしており、医師のハードワークに言及しているし、患者の権利のみを主張していないところに議論の成熟が見られる。
 一方、日本医師会が3月にまとめた「医療基本法草案」では、「患者等の権利と責務」の章で、「自己決定の権利」、「診療情報の提供を受ける権利」、「秘密およびプライバシーの保護」などを定めている。患者の権利を法制化することに対して消極的であった医師会が、ここまで書き込んだことには驚いたし、評価できる。
 出席した民主・自民・公明・みんなの党・社民党の議員からは、3団体の主張する草案に対し一様に「よく練られている」「大いに賛成」「早ければ来年の通常国会にも」と前向きなコメントが出たが、制定まですんなりいくかは未知数だ。医師会以外の関係団体の意向もあるし、医師会と3団体の草案も似ているが、やはり少し違う。医療基本法の理念について医師会は憲法25条の生存権と14条の平等権を示し、3団体は25条の生存権と13条の幸福追求権を示している。平等か幸福追求か、立場の違いから来る見解の相違だろうが、基本法制定に向けた議論にどう影響するか気になるところだ。



(2012年4月27日掲載)



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(2012年5月11日掲載)
◆平等か幸福追求か
(2012年4月27日掲載)
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(2012年4月20日掲載)