オピニオン
勤務薬剤師の職業意識
8月30日から9月1日までの3日間にわたり江東区の東京ビッグサイトで行われた「JAPANドラッグストアショー」。ドラッグストアに関連する製薬会社から化粧品メーカー、日用品企業など国内外385社が出展し、3日間の延べ人数で約10万人が来場するなど大盛況をみせた。いくつかのシンポジウム等を傍聴するなかで、ひとつ気になる言葉に遭遇した。薬学生の質問にドラッグストアで勤務する現役の薬剤師が答えるセミナーの中で、薬学生から一般用医薬品の販売について質問が行われた際、回答した薬剤師が「OTC薬剤師」や「調剤薬剤師」という言葉を用いたのだ。聞き覚えなのない単語だった。あくまでも質問に対する薬剤師の答えであり、わかりやすさに重点を置いた言い方なのかもしれない。しかし、業界に入って結構な年数が経過するが、「OTC~」や「調剤~」薬剤師という単語は初めて耳にした。言わずもがな、薬剤師は法的に医師と同じ教育年限が設けられ、医師の処方に待ったをかけられる強い権利を有する国家資格者だ。薬剤師法に記載のある通り、全ての医薬品の供給を司る専門職であり、国内の医薬品流通をグリップしている存在と言っても過言ではないだろう。全てを司る存在でありながら何故、ひとつの業務を切り取るような表現をするのか、首を傾げてしまった。発言の背景として考えられるのは、薬学教育におけるOTCへの取組み不足だ。これはかねてから指摘されており、課題として長く横たわっている。薬学生に話を聞くと「大学でOTCはほとんど教えてもらっていない」と言い、大学関係者も薬局等の現場を知らない教授は少なくないと打ち明ける。特にドラッグストアでは登録販売者がOTCを販売していることが大半であり、薬剤師の実態は調剤が中心であることは否めない。その一方で、厚労省は「患者のための薬局ビジョン」などで、OTCを含めた管理を呼びかけている。求められる姿と実態の姿。セミナーでのやり取りは、実態と法制度の理念のギャップを十分に感じさせると同時に、今後を見据えたとき、薬剤師には大幅な意識改革が迫っていることを改めて感じた。
(2024年9月27日掲載)
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