オピニオン
社会保障予算の行方
全国の医師・歯科医師10万人で組織する全国保険医団体連合会(保団連)がこのほど、会員医療機関を通じて患者約600人に「医療に関するアンケート」調査を実施。「日本の予算のうちで、どの分野を増やしてほしいか(3つまで)」の問いに、「社会保障」が87%と群を抜いて1位、次いで「食料安定費」が45%、「文教費」が33%となったという結果が出た。調査客体が患者であることから、必要以上に社会保障に関心が及ぶのは当然だが、それを差し引いても患者の多くは社会保障予算の拡充を求めていることが容易に認識できる。
予算といえば、もうすぐ政府が06年度予算の概算要求基準(シーリング)を決定する時期だが、いまだに見通しが立っていない。郵政民営化法案の審議が最優先に置かれているからだ。国会議員も、小泉首相の「郵政法案が否決されたら解散」の言葉に備え、選挙ムードに入っている。選挙区の地盤固めに忙しくシーリングどころじゃなさそう。
永田町とは裏腹にシーリング決定に向けて着々と動いているのは霞ヶ関。財務省は06年度概算要求で社会保障関係予算の自然増を4000~5000億円削減するため、診療報酬・薬価改定による医療費引き下げの他に、長期入院の食事代と室料の全額自己負担化、高齢者の2割負担(高額所得者は3割負担)の患者負担増計画を厚労省に打診している。とうとう高齢者の2割負担の到来か。日本医師会は社会保障予算に充てようと、たばこ税の引き上げを政府に要望しているが、政府の反応はどうも冷たい。患者の声は届かず社会保障予算は今年も削られそうだ。
(2005年8月5日掲載)
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