オピニオン

日医会長の分業批判で広がる波紋

 日本医師会の横倉義武会長による医薬分業への批判が、薬剤師サイドに大きな波紋を広げている。日医の横倉会長は会長就任後の所信表明で、膨張を続ける医療費への対応策として、調剤医療費の伸長を問題視。「「医薬分業でどれほど医療費が伸びたのか。患者のためになっているか検証が必要だ」と発言したのだ。横倉会長のこの発言を巡り、薬剤師団体も敏感に反応を示した。
 日本保険薬局協会の新会長に就任したクオールの中村勝社長は「医療財政が厳しいなか、1兆数千億円にのぼる調剤技術料への評価は厳しくなるだろう」と観測。その上で日医との緊密な関係を築いて事態を改善したい方針を示し、「トップとコミュニケーションをとり、分業に関する何らかの会合を開けるようにしたい」と語る。
 一方、日本薬剤師会の会員内でも不満が噴出する。5月16日に開かれた都道府県会長協議会では各県の会長から、「医薬分業率が70%に達しようという時に、このような発言は問題」「薬剤師に対する冒涜」などの声が相次いだ。これに対して日薬執行部は「(横倉会長が問題視しているのは)町中で頑張っている薬局ではない」と返答。批判の根幹が大手の調剤薬局チェーンにあると読み取れる発言を残した。
 14年度診療報酬改定に向けて、ある厚生労働省の関係者は「調剤報酬に厳しいメスが入れられることは間違いない。ターゲットは調剤基本料になるだろう」とみる。薬局・薬剤師にとっては、いかにして分業の意義について、国民生活者にも分かりやすいエビデンスをもって証明していくか。2年後の次期改定を控えて早くも正念場を迎えている。



(2012年6月8日掲載)



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