オピニオン

「大規模臨床試験は何のため?」

 最近、ノバルティスが行った大規模臨床試験「 VALUE 」をめぐって様々な議論が繰り広げられている。ノバルティスが試験結果を発表した次の日、ファイザーはそれに対する意見を発表。さらには「大規模臨床試験を正しく評価するために」とファイザー主催で VALUE 試験結果を解析したセミナーまで開催された。
 今回、大きな話題を呼んでいるのは、両社の解釈の相違である。しかし、ここでは主に「勝った」「負けた」という議論をしている印象が強く、お互いが自社製品の優位さを主張しているだけのようにも見て取れる。そのような中、ある医療関係者は、現在の企業主導型の大規模臨床試験が商業主義に利用されていると指摘。問題点として、① 1 次エンドポイントで良い結果が出ない場合、 2 次エンドポイントで探す②統計上のマジックを駆使して、良い結果らしさを装う③良い結果であったような記事広告をのせる――などを挙げ、学会主導や複数企業による試験実施などの改善案を示していた。
 降圧剤は 2005 年には 6800 億円の市場規模になると予測されており、競争はますます激化している。そのような中、各メーカーが自社製品の売り上げを伸ばそうと必死なのは理解できる。しかし、臨床試験に関して言えば、現在の状況と各企業がよく口にする「患者中心の医療」とが、あまりにもかけ離れているのではないだろうか。「勝った」「負けた」の議論ではなく、「大規模臨床試験とは一体何のためにやるのか」ということを、もう一度考え直しても良いのではないかと思う。



(2004年7月23日掲載)



前後のオピニオン

合併についての短い考察
(2004年7月30日掲載)
◆「大規模臨床試験は何のため?」
(2004年7月23日掲載)
採算性で計られる社会保障
(2004年7月16日掲載)