オピニオン

ドラッグロスによる情報不在

 今年8月、日本初のHIV-1感染症の曝露前予防薬(PrEP)「ツルバダ配合錠」が、公知申請に基づく承認事項の一変承認を取得した。2018年に日本エイズ学会より厚生労働省へHIV感染の予防投与に対する要望書が提出され、未承認薬・適応外薬検討会議で協議の結果、医療上の必要が高いと判断されていたものだ。同剤のHIV-1感染症のPrEPとしての適応は、2012年に米国食品医薬品局(FDA)で、2016年に欧州医薬品庁(EMA)で、その後、中国、台湾、韓国を含むアジア諸国で承認を得ており、世界保健機関(WHO)のガイドラインでも世界的に推奨されている。一方で、国内ではこれまでPrEPとしての薬事承認が得られていなかったため、「PrEP利用の手引き第1版 ver・2・0」によると、インターネットのサイトや性感染症の診療を行うクリニックでの処方などによってジェネリックの輸入薬を使用する人が急増していたという。同手引きでは「PrEPが未承認であり、公的なPrEP情報の不在から、特にネット情報では玉石混交の情報の中から適切な情報へのアクセスとリテラシーの涵養が困難となっている」と指摘。「PrEPが承認されれば、厚生労働省や日本エイズ学会からの情報提供という形で、情報提供を行うことも可能」との見解を示していた。
 昨今、ドラッグラグ・ドラッグロスの深刻化が大きな課題となっているが、これによって医薬品の「正しい情報」が提供しづらいという問題も生じている。然るべき機関から適切な情報を発信するためにも、ドラッグラグ・ドラッグロスの解消に向けた大胆な見直しが求められる。



(2024年9月13日掲載)



前後のオピニオン

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(2024年9月20日掲載)
◆ドラッグロスによる情報不在
(2024年9月13日掲載)
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(2024年9月6日掲載)