オピニオン
ある神通力の衰退
10月26日の自民党医療委員会。厚労省の医療改革試案に対する三師会のヒアリングで、ある国会議員が、最初に意見開陳の機会を与えられた日医執行部の口述を制し、「改革試案に反対なのは分かっている。反対ならば、対案を説明してほしい」と釘を刺す場面があった。反論ペーパーしか用意していなかった日医は、事前配布した資料説明で場を取り繕ったものの、出席議員の質問攻めに遭い、答弁しても返ってくるのは非難、批判、反発の言葉だけ。ある医療関係者は「この時ばかりは日医に同情した」と仏心が出るほどの異様な雰囲気だったと述懐する。
日医と自民党の力関係について、ある党関係者の言葉を借りると、「日医が先生で、議員が生徒」。それが「議員から袋叩きに合う」逆転現象を招いた切欠となったのは、日医が先の衆院選で支持政党を地方医師会の自主性に任せ、結果、郵政民営化法案に反対票を投じた自民党議員や野党推薦の候補者を支援したことが、「官邸=小泉首相の逆鱗に触れた」というのだ。小泉政権圧勝を受け、助け舟を出すはずの厚生関係議員も及び腰。日医が関係議員の部屋を陳情に回っても「反応は今一つ」で、中には訪問をやんわりと断った議員もいたという話も出ている。
先日、医療系37団体の会長らが都内の日医会館に一堂に会し、厚労省試案にある患者負担増に反対する国民運動を全国展開すると決断した。昨年は混合診療反対運動を成功裡に導いた実績をもつが、その起爆剤となったのは、衆参両院で320名もの国会議員の紹介を得て国会提出した請願書の存在だった。だが日医の植松会長は「今回請願は出さない」との考えを表明した。
ある党関係者は日医の現状をこう評言する。「日本医師会という神通力は確実に弱りつつある」と。
(2005年11月18日掲載)
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