オピニオン

支倉常長の帰国

 時事性を考えると、郵政民営化をめぐる一連の話題に触れるべきなのであろうが、食傷気味なので別の話をしたい。
 今日8月26日といえば、世界に目を向けるとフランス国民会議が「フランス人権宣言」を採択したことや、国連による「ナミビアの日」制定、ユースホステルの創始者のアルト・シルマンを記念する日などで知られている。一方、我が国においては、レインボーブリッジの開通や初の24時間チャリティ番組の放映、東京女子医大による日本初のCT開始などがあり、少し遡ってみると、1620年のこの日には、伊達政宗の命を受け、慶長遣欧使節団を率いてヨーロッパに赴いていた支倉常長が、実に7年ぶりに帰国している。
 この支倉常長は、当時としては珍しくローマ法王と謁見したことや、大西洋および太平洋の横断といった偉業を成し遂げた人物であるが、使節団の目的である日本への宣教師の派遣とメキシコとの貿易についてイスパニア国王に許可を得ることは適わず已む無く帰国している。更に不幸だったのは、当時の日本は徳川幕府によって1614年に禁教令が出されており、仙台藩においてもキリスト教に対する弾圧が激化していたこと。敬虔なキリスト教徒であった常長は失意のどん底のうちにこの世を去ったそうな。
 常長のような話は現代においても笑い話として聞くことができる。とある企業のサラリーマン。社の期待を受けて意気揚揚と出向。数年の期間を経ていざ戻ってみると、居場所が確保されているはずの我が社は他社に吸収。不遇のうちに会社人生を過ごしていく・・・。目下、製薬業界は業界再編の真っ只中。意外と、笑えない人が多い話かもしれない。



(2005年8月26日掲載)



前後のオピニオン

不足しているのは「課題設定能力」
(2005年9月2日掲載)
◆支倉常長の帰国
(2005年8月26日掲載)
イチゴ・ヨーグルト--8000キロの旅
(2005年8月19日掲載)