オピニオン

統合失調症の姉、家族の記録 『どうすればよかったか?』

 統合失調症の症状が表れた8歳上の姉と、彼女を病気とは認めずに精神科の受診から遠ざけた両親の姿を20年にわたって記録したドキュメンタリー映画『どうすればよかったか?』が公開中だ。
 両親は医師であり研究者でもあったが、姉を精神科に一度受診させた後は、20年間治療に向けた行動を起こすことはない。監督の藤野知明氏は公式サイトで、「姉はたくさん才能を持って生まれましたが、発症してからは、それを十分に発揮することなく、ほとんど独りで生きていました。我が家の25年は統合失調症の対応の失敗例です。どうすればよかったか? このタイトルは私への問い、両親への問い、そして観客に考えてほしい問いです」と述べている。あくまで「どうすればよかったか?」がテーマであり、映画では発症の理由と、統合失調症がどういった病かを説明しない。
 一方である出来事をきっかけに姉は入院することになるのだが、会話もままならなかった姉は投薬を始めた途端に意思疎通が取れるまでに回復する。薬は届かなければ意味がないということをあらためて感じたシーンでもある。
 「どうすればよかったか?」という問いへの答えは人それぞれだろう。映画がその問いを投げかけることによって、誰にでも起こりえる普遍的な問題だと提起している。かなり重いテーマではあるが、素晴らしい作品なので興味があればぜひともおすすめしたい。



(2025年1月10日掲載)



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