オピニオン

後の祭り

 こういうのを「後の祭り」というのだろう。新年度最初の中医協、議題は新薬の薬価収載。定例案件だが、収載される新薬のひとつに「既収載品のラセミ体を光学分割した新薬」が含まれていた。12年度改定から導入が決まった新ルールでは、「既収載のラセミ体を光学分割した新薬」は類似薬効比較方式Ⅰで算定される価格の0.8掛け、類薬方式Ⅱの要件にも当てはまる場合はどちらか安いほうの価格での算定となる。ただし①既収載品が薬価収載から15年超経過している②既収載のラセミ体に比べ高い有効性、安全性を有する③既収載品の製造販売業者と異なる製造販売業者が開発している場合のいずれかに該当する新薬は適用除外となる。そして、新ルール導入後記念すべき最初のラセミ体光学分割薬となったこの新薬は、めでたく除外規定に合致したのである。
 新ルール第1号の新薬からいきなり除外となったことで、委員もようやく「おや」と思ったのだろう、「薬価収載から長時間経過したものを除外するのであれば、ルール自体の見直しが必要」と訴えたのだが、この遣り取りに腹の底で舌を出した業界関係者もいたかもしれない。「薬価収載から長期間経過したもの」が多くなるであろうことは、00年以降に光学分割薬として収載された新薬3剤(ネキシウムカプセル=既収載ラセミ体の収載から20年後、ザイザル錠=同12年後、ポプスカイン注=同39年後)を見れば予測できたはず。さらにいえば除外規定の③、すなわち「製造販売業者が異なる」という要件により「長期間」経ずとも除外される道も開かれた。ちなみに除外規定③は、厚労省の当初提案にはなかったのを業界専門委員の要望で付け加えられた経緯があるのだが、いずれにしても、中医協において正式な手続きを経て了承されたルールである。
 ちなみに仮にルールが適用されて薬価が抑えられても、安い価格が「売り」になるケースもあることは、昨年9月収載のネキシウムが立証済み。どちらに転んでもあまり損はなさそう。そこまで見越していたとすればなかなかの知恵者だが、さて。



(2012年4月20日掲載)



前後のオピニオン

平等か幸福追求か
(2012年4月27日掲載)
◆後の祭り
(2012年4月20日掲載)
ある門前薬局での風景
(2012年4月6日掲載)