オピニオン

「創薬力向上のための官民協議会」

 政府は6月26日に首相官邸で「創薬力向上のための官民協議会」を開き、創薬エコシステム育成施策の方針・課題・改善策などに関する具体的な内容を議論するためのワーキンググループ(WG)を設置することを決めた。9月上旬にも初会合を開き、まずは薬価制度政策を中心に審議し、秋頃には議論の整理を中央社会保険医療協議会などの関係審議会に報告して26年度薬価制度改革に反映させたい考えだ。会合には石破茂首相も出席し、国内外の業界関係者に向けて「日本を創薬の地とするための継続的な投資をご検討頂きたい」と呼び掛けた。
 WGでは主に▽我が国の創薬力の強化▽国民に最新の医薬品を迅速に届ける▽投資とイノベーションの循環が持続する社会システムの構築――を主な議題に据えて検討を深めていく。このうち「投資とイノベーションの循環が持続する社会システムの構築」を最初は中心に議論し、秋頃に議論の整理を中医協などの関係審議会に報告する。会合後に記者団の取材に応じた前厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課長の水谷忠由氏は「薬価自体を決めるのは中医協だが、薬価を議論する上で大きな方向性をWGで議論の整理を行って頂く。それを踏まえた議論を中医協で行って頂きたい。そうした意味も含めて秋頃に整理する」と説明。26年度薬価制度改革にWGでの議論の成果を反映させたい方針を示した。
 厚生労働省医政局の森真弘医薬産業振興・医療情報審議官は8月1日に専門紙記者団の共同取材に応じ、「製薬企業の関係者を含め、官民が1つの方向に向かって創薬力を高めていく努力をしていくことが重要だ。そのような取組みを実現する1つのツールとして官民協議会は重要な役割を果たしていくのではないか」と期待感を表明。「今後はワーキンググループで9月以降に議論して頂くことになっており、皆さんの積極的なご意見を聴きながら1つの方向性に進んでいけるようにできれば良い」と述べたほか、「日本製薬工業協会をはじめ、製薬関係者は官民協議会に期待しているところが非常に大きいと聞いている。そのような期待にきちんと応えられるような議論をしていきたい」と語った。具体的な薬価政策を決めるのは、あくまでも中医協になる見込みだが、薬価政策も含めて創薬力向上に向けた大方針を政府主導で議論する会議体だけに、今後の動向に注目が集まる。



(2025年8月8日掲載)



前後のオピニオン

『みんななかよく』の輪
(2025年8月22日掲載)
◆「創薬力向上のための官民協議会」
(2025年8月8日掲載)
活発化する品目統合の動き
(2025年7月25日掲載)