オピニオン
誰の匙加減
7月1日から牛生レバーの提供が禁止された。昨年4月のユッケ食中毒事件で死者が発生し、その後の調査で原因となったO157大腸菌がレバー内部にも存在することが確認されたものの、現時点では加熱以外に殺菌法がないというのがその理由だ。違反した場合は2年以下の懲役などが科されるというから、罰則もかなり厳しい。
この件については「庶民の楽しみを奪うな」といった生活感の滲むものから、「自由主義を標榜しながら(危険を冒しても食べるという)愚行権を認めないような国家は活力を失う」といった高尚なものまで、様々な批判が展開されている。しかし各種メディアで報じられている厚労省の見解を聞いていると、「やむを得ないのでは」という気もしてしまう。食べて寝込むのが本人だけならまだしも、二次感染の報告例もあるとのことで、更なる周知徹底等だけでは、国も責任を果し切れないということなのだろう。加熱以外の殺菌法が早期に発見されることを願うばかりだ。
さて、奇しくも同日にはカリフォルニア州でフォアグラの提供が禁止された。しかしこちらは衛生上の問題ではない。ガチョウなどを人工的に脂肪肝にさせるガヴァージュ(強制給餌)が残酷だからというのが理由で、そもそも庶民の問題ですらないようだ。
ガチョウが喉の奥にまで漏斗を突っ込まれ、穀物を流し込まれている眺めは、確かにやるせない感じがするが、しかしそれを肯定するのも否定するのも、結局は一部の人間の匙加減、ということも何だかやるせない。それなら霜降りになるまで太らされる牛は、ガヴァージュされていないからOKなのか、という気もするし。自由主義社会のアメリカで、シェフ達はどの程度愚行権を主張しているのだろうか。
(2012年7月20日掲載)
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◇生活保護受給者への後発品使用の「義務化」 (2012年7月27日掲載) |
◆誰の匙加減 (2012年7月20日掲載) |
◇治療と職業生活の両立 (2012年7月13日掲載) |