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2025年度中間年改定
昨年末の関係3大臣(内閣官房長官、財務大臣、厚生労働大臣)による大臣折衝に伴い、2025年度薬価改定の概要が正式に決まった。イノベーションの推進や医薬品の安定供給確保の要請にきめ細かく対応するため、新薬や長期収載品、後発医薬品といったカテゴリー別に対象範囲を設定。平均乖離率5・2%を基準とし、「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」(新薬創出加算)の対象品目と後発品はその「1・0倍」、「新薬創出加算」の対象品目以外の新薬は「0・75倍」、「長期収載品」は「0・5倍」、その他の医薬品は「1・0倍」を超える医薬品を対象とする。対象品目は全品目の53%に当たる9320品目となる。
また、薬価算定ルールでは「後発品の価格帯集約」「基礎的医薬品」「最低薬価」「新薬創出加算」「追加承認品目などへの臨時的な加算」「臨時的な不採算品再算定」「既収載品の外国平均価格調整」――を適用。「新薬創出加算」に関しては新たに累積額の控除も実施する。「新薬創出加算」の対象品目などを比較薬にして算定された品目の取扱いも含む。また、最低薬価は引き上げた上で適用する形となった。
こうした措置の結果、実勢価格改定を含む薬剤費の影響額は2466億円(国費ベース648億円)削減となる。前回の23年度中間年改定では、対象範囲を平均乖離率7・0%の0・625倍(4・375%)超を基準とし、全薬価基準収載品目の69%(1万3400品目)が該当。薬剤費の削減額は3100億円だった。その前の21年度中間年改定では4300億円の削減だったことから、薬剤費削減額だけをみると中間年改定の製薬産業界に与える影響は、減少傾向にあるといえる。
ただ、日米欧の製薬団体は反発を強めており、特に米国研究製薬工業協会は「特許期間中の新薬のうち43%の製品の薬価を引き下げるとともに、これまでの中間年改定で一度も適用されていない新薬創出加算の累積額控除といった実勢価格改定と連動しないルールを適用することになる。この予期せぬ決定で企業の中には、10年以上前から長らく策定してきた綿密な投資回収計画の見直しを迫られ、数百億円もの損失を被る可能性がある」と強調。日本製薬工業協会も「新薬創出加算」の累積額控除などを問題視し、「薬価改定時の加算のように評価すべき施策もあるが、医薬品全体で2466億円の薬剤費削減は製薬企業にとって大きな負担となる」と訴え、「ネガティブな政策が決定されたことは誠に遺憾だ」と批判している。
(2025年2月14日掲載)
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