オピニオン

「甲子園には1回戦も2回戦もない」

 一昨年亡くなった漫画家の水島新司氏が遺した高校野球漫画の金字塔「ドカベン」。無敗の明訓高校の連勝記録は続くのか途絶えるのか、掲載された週刊雑誌の発売日が毎週、待ち遠しかったものだが、その「ドカベン」で印象的だったシーンがいくつかある。
 ひとつは明訓のライバル校の監督の台詞。甲子園の2回戦で苦戦する明訓高校をスタンドから観戦していたライバル校の選手が「まさか2回戦で負けるとは思わないが」と漏らすと、自身もエースとして前年の大会で対戦、惜敗を喫した監督がピシャリと一言。「甲子園に1回戦も2回戦もない。すべてが決勝戦なんだ」。言われてみれば、甲子園に出場するチームはすべて地区予選を勝ち抜いてきた学校だから、すべて決勝戦と同じだ、と小学生なりに得心したものである。
 もうひとつは、翌年の全国大会での異常気象の連続。沖縄代表と対戦した準決勝は、春の選抜大会とは思えない猛暑日となり、暑さに慣れた沖縄代表校に苦戦。何とか退けた翌日の決勝戦は、北海道代表との争いとなるが、今度はうって変わって雪が舞う極寒。寒さに慣れない明訓にはハンデとなるが、これも克服して優勝に漕ぎ着ける。
 さて、当時は「現実にはそんなことあり得ない」と思ったものだが、いまや温暖化の進展による天候不順で、いわゆる「季節外れ」の気候も日常茶飯。なかでも夏の暑さは年々、厳しくなっており、甲子園大会でも熱中症対策は必須。今年の大会からは、試合途中のクーリングタイムの導入等に加えて、午前と夕方の2部制も試験的に導入される。さらに将来的な7イニング制導入に向けた検討も開始されたとのこと。
 甲子園球場が100周年を迎える今年の夏は、連日40度近い猛暑日が続き、例年以上に暑さ対策が不可欠となりそう。もちろん、応援する我々自身も熱中症対策に万全を期したうえで、選手たちの熱いプレーに期待したい。



(2024年8月9日掲載)



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