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10月から始まる長期収載品の選定療養
厚生労働省は10月から長期収載品の選定療養をスタートさせる。同省のホームページ上では「10月からの医薬品の自己負担の新たな仕組みとして、後発医薬品(ジェネリック医薬品)があるお薬で、先発医薬品の処方を希望される場合は、特別の料金をお支払いいただきます」と発信。「特別の料金」については、「先発医薬品と後発医薬品の価格差の4分の1相当の料金」と説明し、具体例として「先発医薬品の価格が1錠100円、後発医薬品の価格が1錠60円の場合、差額の40円の4分の1である10円を、通常の1~3割負担とは別に特別の料金としてお支払いいただきます」と示した。加えて、「この機会に後発医薬品の積極的な利用をお願いいたします」とも訴えている。
Q&Aも4問掲載している。「なぜ『特別の料金』を支払わなくてはならないのか」との問いに対しては「みなさまの保険料や税金でまかなわれる医療保険の負担を公平にし、将来にわたり国民皆保険を守っていくため、国は、価格の安い後発医薬品への置き換えを進めています」とし、「そのため、医療上の必要性がある場合などを除き、より価格の高い一部の先発医薬品を希望される場合には、『特別の料金』としてご負担をお願いすることとなりました」と説明。「これにより、医療機関・薬局の収入が増えるわけではなく、保険給付が減少することで医療保険財政が改善される」とも付け加えて理解を求めた。「どのような場合に『特別の料金』を支払うことになるのか」との設問では、「使用感や味など、お薬の有効性に関係のない理由で先発医薬品を希望する場合」と解説している。
長期収載品の選定療養を巡っては、患者の自己負担が増えることから、医療現場でのトラブルや混乱を危惧する声も少なくない。日本薬剤師会森昌平副会長は以前に本紙のインタビュー取材で「目的は選定療養ではなく、あくまでも後発品の使用促進にある。医療上の必要性があって長期収載品を処方する人は対象にならないし、薬剤師が医療上の必要性を判断するケースも出てくる」と話すとともに、「私も自身の薬局で患者に制度を説明したが、十分に理解して頂くのに大変だった。薬局・薬剤師だけでなく、国や医師、保険者とともに制度の周知に努めていく必要がある」との考えを示す。新制度のスタートまで1カ月を切ったが、国民・患者への説明・周知や医療現場・薬局の準備が十分なのかどうかが今後問われてくる。
(2024年9月6日掲載)
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