オピニオン

製薬業界の“トヨタ”は生まれるのか

 トヨタ自動車が米ゼネラル・モーターズから富士重工業の株式を取得し、富士重工業の筆頭株主になることが決まった。自動車業界は90年代後半、世界的な業界再編の中で、経営が悪化した国内メーカーは次々に米国企業の傘下に組み込まれた。しかし、ここ数年で立場は逆転。トヨタが北米市場で業績を伸ばし、最高益を更新し続ける一方、ゼネラル・モーターズ、フォード、ダイムラークライスラーはいずれも販売不振に苦しんでいるという。製薬産業とは事情が異なり、興味深い。
 「外資系企業が日本で成功するためのクリティカルマスはほぼ達成した」。米国研究製薬工業協会(PhRMA)のアントニーA.バトラー日本代表は、日本市場についてこう語った。バトラー氏は日本市場について、①市場競争力の低下②鈍化している成長率③世界における日本市場のパイ縮小――を指摘。マイナス面が、日本市場の魅力である「市場規模」というプラス面を上回りつつあるとしている。日本のマーケットに対していくつかの懸念を示した上での先の発言。真意は定かではないが、日本市場にある程度見切りをつけた発言とも受け取れなくはない。
 国内では武田薬品に次ぐ企業として、三共と第一製薬の持ち株会社「第一三共株式会社」が発足。他にも、大日本製薬と住友製薬が合併した「大日本住友製薬」、帝国臓器とグレラン製薬が合併した「あすか製薬」も新会社としてスタートした。日本発の「メガファーマ」は出てくのか。今が分岐点とも言える。



(2005年10月28日掲載)



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(2005年10月28日掲載)
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