オピニオン
長期収載品とOTC類似薬
中央社会保険医療協議会は2026年度診療報酬改定に向けて、長期収載品の選定療養について先発医薬品と後発品の差額の4分の1と定めている患者の自己負担分を引き上げる方向で検討に入った。後発医薬品の数量ベースでの使用割合が90%以上を超えているなか、患者の自己負担分について厚生労働省は「(先発品と後発品の価格差の)2分の1、4分の3または1分の1(全額)に引き上げることについてどのように考えるか」との論点を提示。診療側は現状維持を主張しているが、支払側は全額にまで引き上げるよう迫っている。
長期収載品の選定療養は、銘柄名処方で患者の希望によって長期収載品を処方・調剤した場合や一般名処方の場合に適用される。ただ、医療上の必要性があると認められるケースや、薬局に後発品の在庫がない場合など後発品の提供が困難な際には選定療養とはせず、引き続き保険給付範囲に含める。対象となる品目は後発品上市後5年を経過した長期収載品で、後発品の最高価格帯との価格差の4分の1相当を選定療養分の自己負担とする。また、後発品上市後5年を経過していなくても、後発品への置換率が50%に達していれば対象品目となる。
また、厚労省は社会保障審議会・医療保険部会で、OTC類似薬の保険給付の見直しに向けた議論にも着手している。高市早苗新内閣の発足を巡り、自由民主党と日本維新の会が交わした「連立政権合意書」には社会保障政策の1つとして「OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直し」が明記され、具体的な制度設計を25年度中に実現する方針を記載されている。医療保険部会の議論では、全国がん患者団体連合会(全がん連)などの患者団体からヒアリングを実施。全がん連は提出資料でOTC類似薬の保険給付外しについて「がんや難病などの疾患の患者にも影響が大きく避けるべき」と反対した。
その一方で「医療保険制度改革全体の中で十分に検討してもなお、OTC類似薬の保険給付の見直しが必要との結論に至った場合には、公的な保険給付の対象としつつ、患者の自己負担割合を変更することで対応することを検討すべき」とも提言。保険給付外しに比べれば患者の負担増が一定程度抑えられ、高額療養費や医療費助成の対象であることも維持され、医療機関の受診機会も確保される可能性があると指摘する。長期収載品とOTC類似薬のいずれも、自己負担の引き上げが避けられない様相を呈してきた。
(2025年11月28日掲載)
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