オピニオン

日本ブランド

 内閣官房に設置された知的財産戦略推進事務局では現在、海外における日本食の安全・安心に関する情報を募集している。確かに、海外在住の知人などに話を聞くと、ここ数年日本料理を扱う店も多く誕生しているが、いざ入ってみると我々日本人が知る日本料理とは全くの別物を提供されることが少なくないという。
 政府によるこの取り組みは、自動車や電化製品がその象徴だった「日本ブランド」戦略の次なる一手として、食・地域ブランド・ファッションなどに着目したライフスタイルビジネスを、国家戦略として支援しはじめたことによる。「日本ブランド」を通じて、日本の魅力・価値の向上に繋げたい考えだ。
 医薬品産業における「日本ブランド」をみると、日本国籍企業のM&Aが活発化しており、ようやく世界と戦える土壌が育ってきたと言われる。しかし、先進7カ国で上市されている新薬のうち、日本オリジンの新薬の成分が日本市場の規模に見合うほど誕生していないなど、ブランド力は必ずしも強いとは言い切れないのが実情だ。
 医薬品の存在意義を考えると、その効能・効果が素晴らしいものであれば、ブランドがどうであれ、良いということになる。とはいえ、世界の医薬品産業の中に「日本ブランド」が力を持てず、国内でも縮小傾向を辿っていくようなことになれば、国のあり方としては非常に問題が大きい。国は、医薬品産業ビジョンで産業政策の方向性を示しているが、実際問題として「日本ブランド」への梃入れは弱い。



(2005年10月21日掲載)



前後のオピニオン

製薬業界の“トヨタ”は生まれるのか
(2005年10月28日掲載)
◆日本ブランド
(2005年10月21日掲載)
さあ新会社のスタートだ
(2005年10月7日掲載)