オピニオン
薬剤師が医師からの信頼を得るために
「高脂血症の次は糖尿病がターゲットになる」――。薬事・食品衛生審議会の一般用医薬品部会で了承された高脂血症治療薬「エパデール」のスイッチOTC薬。厚生労働省が進めるスイッチOTC薬の促進に日本医師会の幹部は危機感を募らせる。実際に日医の中川俊男副会長は会見で、「他の生活習慣病治療薬に波及する"蟻の一穴"になる」と発言している。
スイッチ促進を掲げる日本薬剤師会の反応も早く、生出泉太郎副会長は「(スイッチ化の目的は)メタボリックシンドロームをいかに早く発見して治療に導くことであり、受診を疎外するものではない」と主張。薬剤師職能を疑問視する声に関しては、薬剤師は医師の診断が必要な場合と、自らの判断で販売可能なケースを明確に区別できる。薬剤師として疾病の早期発見や予防に貢献したい」と反論した。
しかし、こうした日薬の主張について、ある日医の幹部は「ただの綺麗ごとに過ぎない」「受診勧奨などは行われず、薬局で全てを完結させる方向に進むだけだ」と一蹴する。中川副会長も「我々は患者の増減という次元でスイッチ化に反対しておらず、生活習慣病を自己管理する危険性を指摘している」と不快感を示した。
双方の意見の隔たりが大きい背景には、薬剤師がこれまでOTC薬を通じたカウンセリングに力を注いでこなかった経緯も大きいだろう。ある日医幹部は「薬剤師から勧められて診察を受けにきた患者をみたことがない」と指摘する。薬剤師が同じ医療職種として医師からの信頼を勝ち取るために求められているのは、「新薬効のスイッチOTC薬ではなく、既存のOTC薬をまず丁寧に扱い、患者からの信頼を得る」(開局薬剤師)ことなのかもしれない。
(2012年12月14日掲載)
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