オピニオン

やせるワクチン?

 昨年、流行語大賞にもノミネートされた「メタボリックシンドローム」。もはや、すっかり市民権を得た言葉となった。一方、その影に隠れがちとなっているのが、厚労省が00年から取組んでいる「健康日本21」。食生活や運動、飲酒など9分野を対象に目標値を設定、膨大する医療費になんとか歯止めをかけようと、国も躍起になって取組んでいる・・・のだが、なかなかどうして。その成果は芳しくないのが現状。昨年行われた中間評価では、高血圧、糖尿病の患者数は、特に中高年男性において改善していないという結果。また肥満者についても、男性では、策定時よりもその割合は増えているという。
 そうした中、昨年夏、「やせるワクチンも現実に?日米が動物実験に成功」という見出しが新聞紙面を飾った。これは、米スクリプス研究所と大阪市立大の研究チームがラットを用いて行ったもの。ワクチンで特定のホルモンの働きを弱め、体重増加を抑えることに成功したという。このホルモンとは、食欲促進や脂肪蓄積などの働きがある「グレリン」。ワクチンで「グレリン」に対する抗体が増えたラットは、食べる量に変化はなかったのに、1日当たりの体重増加は、ワクチンなしのラットの3分の1以下で、脂肪の蓄積も少なかったそうだ。
 米国では成人の肥満(BMI30以上)の割合は80年代初め約8%だったが、05年には22%と約3倍に上昇。一方、日本も例外ではなく、専門医によれば重症肥満患者を対象に行う外科治療では、BMI60以上の患者も少なくないという。納豆がダイエットに効くと聞けば、皆がそれにはしる――。こんな現状なら、分からないでもないか?



(2007年2月2日掲載)



前後のオピニオン

健康志向の「不健康」
(2007年2月12日掲載)
◆やせるワクチン?
(2007年2月2日掲載)
暖冬の一話題
(2007年1月26日掲載)