オピニオン
スイッチ化への合意形成
2018年に記者の道を歩み始めてもう6年になる。最初は医薬品医療機器制度部会の議論も、医薬品が上市されるまでの仕組みも、薬価制度のことも、まるで何もわからず手探りの状態だった。そんな中で「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」の座長を務める笠貫宏氏の言葉がずっと心に残っていた。笠貫氏は「70歳を過ぎて国の審議会はすべてお断りするつもりだった」とするも、評価検討会議の座長を受けたことについて「スイッチOTCは難しい題材。だから、評価科学としてのレギュラトリーサイエンスの第一歩を実践する場として、話を受けた」と語った。同会議には「スイッチOTC化がなかなか進まない」といった批判意見が多く集まった。それに対して「進まないということも大事だと考えている」とし「まだ医師も薬剤師も製薬企業も、何より国民の意識も合意形成も醸成されていない中で、無理にスイッチ化を進めることが必ずしも有益とは思わない」と言い切った。
その後、評価検討会議の体制が変わり、2018年にスイッチOTC化が「否」とされたPPIのスイッチ化の議論が2024年3月より再開、このほど「要指導・一般用医薬品部会」で了承された。海外に遅れること実に約35年以上となる。一方で、この6年の間には新型コロナウイルスの経験を踏まえた人々の健康意識の変革などがあった。緊急避妊薬の試験販売などによって薬剤師の職能に対する信頼性も高まっただろう。「牛歩」ではあった。しかし笠貫氏が言う「合意形成」は確かに醸成されたように思う。
(2024年12月27日掲載)
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◆スイッチ化への合意形成 (2024年12月27日掲載) |
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