オピニオン

薬害被害者が嘆息するOTC売場の荒廃

 先頃、薬害被害関係者の話を聞く機会があったが、その内容は医薬品を提供する薬局、薬店、そしてプロフェッショナルとしての薬剤師に対する失望と怒り、あきらめを含んだものだった。HIV感染者である知人の例を挙げて説明していたが、その知人をここでは仮にA氏と呼ぶ。そのA氏が、講演などでよく全国を回る際のこと。環境が変わるので軽く体調を崩し、一般用医薬品(OTC)のかぜ薬などのお世話になることもよくあるという。その際、薬剤師は併用薬の質問をしてくることがある。対してA氏は、すでにHIV感染者として社会で生きてきた年月が長いこともあり、本人も気にしない性格から、臆せず当該の治療薬を服用している旨を告げる。すると、尋ねられた薬剤師のほうが、口ごもっておどおどするケースが少なくない、とか。知識がないのか、普段聞かない薬剤なので面食らうのかわからないが、A氏はその態度に不信感を募らせる。そして、「これでいいのか」と確認の質問をすると、「大丈夫だと思います」といった自信なさげな回答が返ってくるらしい。
 A氏の体験を教えてくれた薬害被害関係者は、自らもやはり、遠くはない経験を数多くしているというだけあり、「そんなことでは、消費者から信頼は得られないですよね」とあきれる。また、「さらに憤らせるのは、こうした話をすると、それはきっと薬局ではなくドラッグストアですよ、といった言い訳をすること」と語る。「確かに、一部のドラッグストアの販売の仕方はひどい。でも、薬局だろうと、ドラッグストアだろうと、消費者から見れば違いなどほとんどわからない。内輪の仲たがいで結局迷惑がかかるのは消費者。もう少し、なんとかならないものでしょうか」。なんとかならないものでしょうか、関係組織の幹部さんたち?



(2008年2月15日掲載)



前後のオピニオン

クリントン候補が落胆した本邦医療制度の未来
(2008年2月22日掲載)
◆薬害被害者が嘆息するOTC売場の荒廃
(2008年2月15日掲載)
もちろん覚えてますよ、安倍さん
(2008年2月8日掲載)