オピニオン
奢れる平家か、非情な頼朝か
今年のNHK大河ドラマは「義経」。視聴率の面ではあまり芳しくないようだが、「奢れる平家」の評価が一般化している平家を、平清盛を筆頭に、情に厚い、一族の絆を重んじる人物像として提示するなど、従来の固定化した構図、「悪」の平家対「善」の源氏というイメージに固執しない源平の描き方が興味をそそる。他方、武家の頭領、源頼朝はと言えば、徹底的な合理主義に基づき、自らの目的にそぐわないと見れば、弟の義経までも容赦なく切り捨てる非情な人物として描かれているが、その頼朝が創設した鎌倉幕府も、やがては北条氏に実権を奪われるわけで、いずれ「諸行無常の響きあり」、である。
さて、先の衆院選で圧勝した小泉自民党。郵政民営化は言わずもがな、返す刀で懸案の医療費抑制にも切り込みを駈けてくることは必至の情勢で、医療関係者は戦々兢々だ。ところで今の小泉自民党を見ていると、どうしても「源平」を思い浮かべずにはいられない。小泉首相本人は、尊敬する人物として戦国武将・織田信長を挙げているようだが、郵政民営化反対の候補に刺客を送る姿などはまさに「非情な男」頼朝にも擬せられるし、「小泉チルドレン」と呼ばれる新人議員たちは、さしずめ「いざ鎌倉」の掛け声とともに頭領の下に馳せ参じる御家人衆といったところか。さりとて「絶対的安定多数」を笠に着て民意を無視するようなことがあれば、「奢れる平家」との謗りは免れまい。いずれにしろ、「勝てば官軍」とばかりの傍若無人な振る舞いだけは御免蒙りたいものである。
(2005年11月4日掲載)
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◇お前はもう、死んでいる (2005年11月11日掲載) |
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◇製薬業界の“トヨタ”は生まれるのか (2005年10月28日掲載) |