オピニオン
入札をいったん中止
新たに農林水産大臣に就任した小泉進次郎氏は、5月21日の就任会見で、予定していた備蓄米の入札をいったん中止し、随意契約に見直す方向で検討に入ったことを明らかにした。農林水産省は、計31万トンの備蓄米を放出したにもかかわらず、コメの価格は高騰したままだ。これは、備蓄米の放出にあたり、高い価格を提示した業者に売り渡す「競争入札」を行ってきたことが一つの要因だ。小泉大臣が、まず備蓄米の入札を中止したことは評価したい。また、本来安価であるはずの備蓄米が、他のコメと混ぜてブレンド米として販売されていることも価格が下がらない要因だ。備蓄米をそのまま備蓄米として販売したほうが、消費者は安く入手できる。そもそも、川上のJA全農に譲り渡したことも問題だ。消費者に近い大手スーパーに譲り渡したほうが、卸を介する中間コストを削減でき、安いコメが店頭に並ぶはずである。
流通や入札に関する問題点は、医薬品にもある。その一つが、同グループ内や地域内における医薬品の共同入札だ。納入価を下げて薬価差益を確保したい医療機関は、数の力により価格交渉力を高めてきた。さらに毎年薬価改定の導入により、薬価引下げの圧力は一層高まり、採算の取れなくなった低薬価品が増加。これが長引く医薬品の供給不安の一因にもなっている。利益率の低下は卸も同様で、共同入札は医薬品卸の談合事件の発端ともなった。コメ価も薬価も、ゼロベースで流通のしくみから見直すべきだろう。
(2025年5月30日掲載)
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◆入札をいったん中止 (2025年5月30日掲載) |
◇米国の薬価引き下げ政策 (2025年5月23日掲載) |