オピニオン
「所有権」めぐり議論白熱
厚生労働省の「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会」が10月11日、開催された。山中伸弥京都大学教授がノーベル賞を受賞したことにより、一躍注目を集めることになった再生医療。普段はマスコミの姿をあまり見ない同委員会においても、今開催では冒頭の頭撮りにテレビが入るなど、多くの傍聴者が集まった。
同専門委員会では、現在臨床研究が実施できないヒトES細胞についての検討が主たるもの(のはず)だが、iPS細胞の実用化がぐんと近づいたためか、いつもとは違う方向に話が跳んだように見受けられた。それは「権利」と「カネ」の問題である。患者から提供してもらった細胞の所有権はどこにあるのか、樹立した幹細胞は売買できるのか、など喧々諤々。臓器移植や血液製剤の話などにふれられ「参考にすべき」などの意見が出されたが、委員の一人が「所有権などの話は、ここの委員会で検討されるものではない」とようやく冷静な一言を入れたのは、委員会も終盤に差し掛かった頃だった。
医療イノベーション5か年戦略では、医薬品・医療機器産業を日本の成長牽引役と位置付けている。再生医療製品の開発も牽引役の一つとして期待されている。正直、医薬品・医療機器産業が日本経済の牽引役となることに疑問を感じていたが、研究者をこれほど熱くさせてしまう再生医療の実用化。もしかしたら、本当に日本経済の救世主になり得るのかもしれない。
(2012年10月19日掲載)
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