オピニオン

リキッドバイオプシーの未来

 国立がん研究センター研究所が進めているリキッドバイオプシー(LB)の開発研究に関するメディアセミナーに出席した。1滴の血液や尿から13種におよぶがんの早期発見ができる、画期的なバイオマーカーの測定技術に関する内容だ。
 研究では、細胞から分泌されるエクソソーム内のマイクロRNAに着目。体液のマイクロRNAは、がん細胞が生き延びるための手段として、発生の初期から終末期に至るまで積極的に分泌され、血液中を循環しているという。そのため「血液中のマイクロRNAを解析すればがん細胞がどのような状態にあるか分かる」と、落合孝広先生(国立がん研究センター研究所分子細胞治療研究分野プロジェクトリーダー)は説明した。
 この「体液中マイクロRNA測定技術」の開発研究は、19年3月には最終成果発表が予定されている。すでに承認申請に向けた動きもあるという。日本でのLBは、「コバスEGFR変異検出キットv2.0」が保険収載されているが、同薬は「タグリッソ」の一次治療対象者の層別など、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬に対するコンパニオン診断薬としてのみ用いられる。非侵襲的な体液診断で、数種類のがんの早期発見が可能になれば、患者にとって大きなメリットになることは間違いない。
 落合氏は「我々は"早期発見"というスローガンを掲げてがんばってきた。早期の介入は、がん患者さんの長生きに必ずつながる」と研究の意義を強調した。先生の心意気を受け止め、この診断薬の実用化を待ち望む。



(2019年3月8日掲載)



前後のオピニオン

出遅れを挽回できるか
(2019年3月15日掲載)
◆リキッドバイオプシーの未来
(2019年3月8日掲載)
希少疾患から考える
(2019年2月25日掲載)