メディカル・エッセイスト 岸本由次郎  
 
医言放大
 
草食系男子と男性ホルモン
 
   草食系男子という言葉は、世間に広く知れわたっており、細身で優しい印象を与え、若く本来は性衝動が強い年代でありながら女性に消極的、というのが一般的理解。
 さらに、草食系とみなす判定基準として、何事にも態度が控え目で、声が小さく従順であること、色白で消化器系が弱いことなどがあるが、これらの要素すべてを兼ね備えた男子グループを対象にある検診が行われた。
 予想通り、男性ホルモン・テストステロン値は、総じて低度という現象が認められた。
 また、ウォール・ストリート・ジャーナルは、2011年1月13日号に、次のような調査報告を掲載している。「日本の16~19歳の男性の36%が自分を草食系だと考えている」と。
 一方、日本家族計画協会による2012年時の調査報告に次のようなものがある。「20~34歳の若年層で性交渉をすることに関心がない男性が増加してきている」。性交渉に関心がなく、嫌悪感さえ抱いている割合が、20~24歳で25%もいて、3年前より3%も増加している由。
 さらに、25~29歳では2%増加して14%に、30~34歳では6%も増加して13%に。なんと倍増という驚きの実態がある。
 最近の若年カップルでは、性的因子はあまり大きなファクターにはなっていないのであろうか。出生率低下の原因にも関連し、大いに気になるところである。
 草食系男子が若年男性に於ける一部の呼び名として存在する、その成れの果てとして、中高年を対象とした同類の疾患に「加齢男性性腺機能低下(LOH)症候群」がある。
 テストステロンは、ストレスにより減少するとされており、大都会・東京で活躍する中年男性の男性ホルモン値は、一般の平均的高齢者より低かった、とする報告がある。
 一方、女性には長じて女性ホルモン・エストロゲンの急激な減少による更年期が存在、男性以上に強い多くの不快症状に苦しむ。
 LOH症候群に陥る高齢男性はテストステロン値がかなり減少し、動脈硬化、糖尿病と深く関与、認知機能、代謝調節機能など多くの生体機能を低下させ、寿命短縮へとつながる。
 60歳以上の男性5人に1人はLOH症候群との見方がされており、まさに、立派なコモン・ディシーズの1つに。治療には当然、テストステロン補充療法がなされる。

(2014年2月14日掲載)
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