オピニオン
職務発明とその対価
今、街を彩るイルミネーションのうち最も流行っている色は“青”だそうな。この年末年始に、冬の澄んだ空気の中で鮮やかにきらめいている“青”に見とれた方も多いのではないだろうか。“青”の基になっているのが「青色発光ダイオード」(青色LED)。中村修二・カリフォルニア大教授が日亜化学工業在籍中に発明したもので、低電力、長寿命がウリのLEDの中で、長らくその誕生・製品化が待たれていた“ノーベル賞級”とも言われる画期的な発明だ。
この中村教授が日亜に対して起こした、青色LEDの発明対価を求めた訴訟が1月11日、和解という形でようやく終結した。日亜が、中村教授に対して8億4391万円(遅延損害金含む)を支払うことになった訳だが、約200億円の支払いを日亜に命じた一審判決と大きく異なる和解内容や中村教授の“完敗会見”など、大きな反響を呼んだ。
青色LED発明対価訴訟のように、職務研究者が雇用企業を訴えるケースは年々増加傾向にあるという。日本の社会では、“職務発明に対する対価”という概念は、長い間“終身雇用”という暗黙のルールの中で黙殺され、それを口にすることさえタブー視されてきた。このルールが崩壊し、“職務発明に対する対価”という概念が白日の下にさらされた今、雇用契約の中でこれを明確化することが重要であることは言うまでもないだろう。
ある経営者は「研究者は研究できる環境が与えられているだけでも幸せと思ってもらいたい」と主張する。これではあまりにも夢がない。
(2005年1月28日掲載)
前後のオピニオン |
◇結論まで3時間の審議とは? (2005年2月4日掲載) |
◆職務発明とその対価 (2005年1月28日掲載) |
◇新たなる絆 (2005年1月21日掲載) |