オピニオン

先発品も、後発品も

 去る6月に「骨太の方針」が閣議決定され、今年も年末に向けて、製薬業界と財政当局などとの攻防がスタートした。ここ数年は、長期収載薬や高額薬剤などを標的にされた先発品企業の訴えばかりが目立ったが、今年は後発品業界の動きも例年になく活発だった。「数量シェア80%」という政府目標のもと、追い風を受けているはずの後発品業界だが、設備投資の急増などで負担増を強いられ、さらに価格帯集約や収載価格の引き下げなど価格面での締め付けも強まる一方で、いよいよ追い詰められたということか。先発品対後発品の対立構図で見られがちな両者だが、揃って見通し不透明な状況に置かれている。
 ところで、最近刊行された「ジェネリックvs.ブロックバスター」(山中隆幸著、講談社刊)は、これまであまり論じられることのなかった特許戦略の側面から、特に先発品企業のジェネリック戦略を分析していて興味深い。特許庁で、バイオテクノロジー、医薬品分野を中心に特許審査実務や特許行政に従事した経歴をもつ著者は同書で次のように指摘する。「薬剤費削減を優先し、医薬品ライフサイクルマネジメントに関連する制度をGE医薬品企業に有利なものとすれば、先発医薬品企業の収益性が低下」し、逆に「関連制度を先発医薬品企業に有利なものとすれば、薬剤費の高騰につながり、国家財政へ与える影響が懸念」される、だから、産業育成と、安全性、有効性を確保するための規制などとの間で「最適解を模索する」必要がある、と。
 さて、「骨太の方針」を見ると、現状では、先発医薬品にとっても後発医薬品にとっても、あまり有利になりそうなメニューは見られない。では誰に有利なのか。国民に有利になるのか。先発品企業も後発品企業も成り立たないことは、国民に有利なことなのか。それが「最適解」なのか。それとも薬剤費のみで対処するのは限界で、医療費全体のバランスのなかで「最適解」を模索すべきなのか。生活に直結するこうした問題こそ、国民的議論が必要なのではなかろうか。



(2017年7月14日掲載)



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