オピニオン

長寿JAPAN

 今回のロンドン五輪で、日本は過去最多となる38個のメダルを獲得した。前半戦は銀・銅に比べて金の数が極端に少なく、妙にモヤモヤした気持ちになったが、後半からは数を増やし、最終的には前回(9個)に近い7個の金メダルを獲得した。日頃は日の丸や君が代にそれ程思い入れのない自分だが、五輪の表彰式で見たり聞いたりすれば、やはり悪い気はしない。同じ国の人間が勝てば、やはり嬉しく、誇らしい。楽しい五輪だったと思う。
 さて、五輪開始とほぼ同じ頃に日本は、ある競技において四半世紀以上君臨した王座を明け渡した──というのは女性の平均寿命。東日本大震災や20代の自殺増加などが影響したようだが、結果的には前年比0・40歳減の85・90歳に落ち込み、86・70歳の香港にその座を譲った。香港といえば、地区によっては1平方kmあたりの人口が5万人を超える世界屈指の過密地帯だ。さぞかしストレスフルな生活を送っているに違いないと勝手に想像していただけに、いつの間にか王座を奪われたことは、ちょっとショックで寂しかった。
 もう1つ寂しかったのは、王座を譲ったことに対して世間がそれほど騒がなかったことだ。目の前に人口激減&超高齢化のWパンチが迫る危機的状況を考えれば、順位の変動に一喜一憂する気分にはなれない、ということかもしれない。とはいえ自分が幼かった頃、長寿世界一の称号は、それこそ国威の発揚につながる美徳のように思えたし、メディアもそのように盛り上げていたような記憶がある。
 そのうちどこかの国の平均寿命が90歳台に突入するだろう。その時にその国の人々はどんな反応を見せるだろうか。まるで人類が初めて100m走で9秒台を出した時のように歓喜していたとしたら、その国に学ぶことはかなり多いに違いない。



(2012年9月7日掲載)



前後のオピニオン

薬歴指導料「41点」の意義
(2012年9月14日掲載)
◆長寿JAPAN
(2012年9月7日掲載)
トップの能力以上には成長しない
(2012年8月31日掲載)