オピニオン

環境変化と学生の情熱

 先日、薬学生の実務実習後の履修授業について、取材機会をいただいたので帝京大学へお邪魔した。履修授業では、実務実習全体の感想や物足りなかった点、薬局・病院それぞれにおける薬剤師の役割などについて振り返った後、スモールグループディスカッション(SGD)が行われた。SGD後には実務実習を踏まえたうえで、がんで入院する患者に対し、薬薬連携などを視野に入れた薬剤師としての関与のあり方について講義が行われた。入院患者に対する情報収集については、薬局・病院それぞれの立場を想定したものとなっており、病院薬剤部、薬局薬剤師として、普段から使用している医薬品の服薬管理についてヒアリングを行った。薬学生は設定された患者背景に基づき、医薬品の服薬状況や手術に際して想定される懸念点など踏まえ患者に指導し、さらに医師との調整を行ったうえで、その結果を患者に伝達するといったシミュレーションだ。まず驚いたのは授業の多様性だ。医薬品情報について、自身のスマートフォンで検索する学生もいれば、大型タブレットで調べたり、辞書サイズの医薬品ガイドを用いる姿も見られたりした。もしかするとAIを使用していた学生もいたかもしれない。さらに患者へのヒアリングはオンラインで行われ、患者役は別室から薬学生の質問に回答していた。稀に薬科大学・薬学部を取材することはあるが、薬学生の意識は年々高まっている印象だ。特にオンラインでの患者情報の収集は、音声の乱れなどで会話が途切れ途切れになることがあり、その都度丁寧に聞き直していた。昨今、電話対応ができない新卒者の話題も少なくない中、その頼もしさに頬が緩んだ次第だ。厚労省の試算によると、早ければ約10年後には薬剤師の供給過多に陥るとみられる一方、薬剤師の偏在問題は様々な手を打っている印象にあるものの、効果的な打開策までには至っていない。加えて薬機法改正法案が今国会に提出されるなど、薬剤師を巡る環境はますます変化に富んでいく。学生のイメージよりもずっと生存が厳しい時代に差し掛かるかもしれないが、患者や地域住民のために薬剤師ができることは何か。学生時代の情熱は現場に立っても忘れずにいて欲しい。



(2025年3月7日掲載)



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