オピニオン
緊急避妊薬のOTC化
緊急避妊薬のスイッチOTC化に向けた動きが本格化している。厚生労働省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」が5月26日に開かれ、緊急避妊薬のスイッチOTC化に向けた条件整備を議論し、薬剤師の面前服用や年齢制限、親の同意、価格といった課題を整理。評価報告書として取りまとめ、実質的に承認の可否を審議する薬事審議会要指導・一般用医薬品に提出する方針を示した。製造元企業のあすか製薬は昨年6月にスイッチOTC化の承認申請を行ったことを公表。医薬品医療機器総合機構で審査が進められている状況にある。
緊急避妊薬のスイッチOTC化を巡り、先に可決・成立した医薬品医療機器等法(薬機法)改正案では医薬品の販売区分・販売方法を見直し、現行で薬剤師による対面販売が義務付けられる「要指導医薬品」の扱いを変更。薬剤師が適切な情報提供を行った上でのオンライン販売を認める一方、引き続き薬剤師による対面販売のみとする「特定要指導医薬品」を薬機法上で新設した。厚生労働大臣が薬事審議会の意見を聞いた上で指定する。加えて、一定期間を経過すれば第1~3類医薬品に自動的に移行する仕組みを巡り、引き続き「要指導医薬品」に留めておくことや、必要に応じて第1~3類医薬品から「要指導医薬品」に戻す運用も取り入れた。
緊急避妊薬のスイッチOTC薬は「特定要指導医薬品」に指定される可能性が濃厚だ。参議院厚生労働委員会では、立憲民主党の高木真理議員が「緊急避妊薬が特定要指導医薬品の候補の1番手になっていると聞いている」と指摘。これに厚労省医薬局の城克文局長は「現時点で答えるのは困難」としながらも、「スイッチOTC化に関する検討の過程のなかで、乱用・悪用防止の観点から、対面販売・面前服用を求めるべきとの意見を頂いている」と応じていた。評価検討会議の議論でも、スイッチ化の条件に薬剤師による「面前服用」を求める声が多く、ヒアリングに参加した市民団体側も「非常に残念だが全ての要望事項が実現されなかったとしても、まずは緊急避妊薬の一刻も早いOTC化を求めたい」と強く訴えていた。2017年には時期尚早として見送られた緊急避妊薬のスイッチ化だが、8年近くの議論と様々な紆余曲折を経てようやく実現に向かいつつある。
(2025年6月6日掲載)
前後のオピニオン |
◇新たな希少がん分類を策定 (2025年6月13日掲載) |
◆緊急避妊薬のOTC化 (2025年6月6日掲載) |
◇入札をいったん中止 (2025年5月30日掲載) |