オピニオン
新たなる絆
昨年は、天災に泣かされた年だった。甚大な被害をこうむった被災者、被災地の一刻も早い復興を願わずにはいられない。被災が悲劇であることには間違いないが、被災地に駆け付けたボランティアや、スマトラ沖地震・津波の際の民間による支援など、人と人の繋がりを感じさせる動きもあった。中越地震発生直後には3000人を超えるボランティアが被災地に集まった。スマトラ沖地震・津波では、タイに進出していた製薬企業が、バンコクで医薬品や医療用具を調達し、トラックで15時間かけて被災地に届けた。インドネシアに進出していた製薬企業は、医薬品と食料を現地警察と協力して被災地に送った。
10年前の阪神大震災で活躍がクローズアップされたボランティア。1995年は、「ボランティア元年」と言われた。98年にはNPO法が施行され、03年にはNPO法人が1万を超えた。
市場経済とテクノロジーの進展を背景に進んだ社会の個人化(共同体の崩壊)がさらに進めば、現行の社会保障制度を維持するのは難しくなる。世代間扶養の前提となる「世代」が、一括りに出来なくなるからだ。
NPO、NGOといった市民活動が、すぐさま地域、血縁などを基盤とした共同体の代替物となることはないだろうが、バラバラになった個人が社会とどのように関わっていくか、21世紀の社会のありようを展望する際の1つの手がかりとなる。
(2005年1月21日掲載)
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