オピニオン

制度理解への責任

 厚生労働省は3月14日、抗がん剤「レブラミドカプセル」などの海外副作用事例を報告していなかったとして、セルジーンに対して業務改善を命令した。原因はセルジーンが原因を特定できない海外死亡事例が報告対象となっていることを把握していなかったためで、厚労省は「セルジーンは医薬品医療機器等法(薬機法)に対する理解不足により、違反した運用を行っている事実を発見できなかった」と説明する。
 話は2年ほど遡って15年2月、厚労省はギリアド・サイエンシズに対して業務改善命令を下している。セルジーンの事例と類似しており、申請中・治験中だったC型肝炎治療薬「ソバルディ錠」や「ハーボニー配合錠」などについて、海外で市販後に発生した副作用情報の報告が遅れた。原因も同様に、「日本の法制度に対する理解不足」があったと指摘されている。
 両社の概要を見るといくつかの共通点が見られた。いずれも米国に本社を置き、設立は30年ほど前。日本への参入はセルジーンが05年、ギリアド・サイエンシズが12年と比較的最近で、上市数も5成分以下となっている。
 確かに法制度は複雑なもので、副作用の取り扱いも国内か国外か、未知か既知かなどによって違ってくることもあり、外資系だけでなく新規参入する製薬企業にとっては理解が難しい部分があるかもしれない。その制度を分かりやすく伝えることも行政の重要な役割だろう。それでも医療保険制度の中で事業を行う以上、製薬企業には制度を正しく理解する責任があると認識していただきたい。



(2017年4月7日掲載)



前後のオピニオン

エールを送りたい
(2017年4月21日掲載)
◆制度理解への責任
(2017年4月7日掲載)
薬局の「OTC薬離れ」で進む規制緩和
(2017年3月31日掲載)