オピニオン

四角い紙風船

 先日、知人より懐かしいものを頂いた。四角い紙風船だ。紙風船と言えば、一般的にはカラフルな球体だろうが、頂き物は赤青2色刷りの正六面体。各面には、富山城や黒部渓谷などのイラストが印刷されており、駄菓子屋の玩具には見えない。
 四角い紙風船の正体は、富山県の薬売りの販促グッズだ。薬売りが訪問家庭に配っていた紙風船は、筆者のように富山を故郷とする人間には馴染み深いもの。今でも実際に配られているらしいが、どちらかと言えば観光土産のような立ち位置になっているのは、少し寂しい。
 寂しいついでに話を広げれば、薬売りの「配置販売業」自体が現在、後継者不足などの課題を抱え、厳しい状況にあるという。しかし、あらかじめ家庭に薬を預けておき、使用した分だけ後で集金する「配置販売業」のシステムは、「セルフメディケーション」や「かかりつけ薬剤師」の意義が叫ばれる今だからこそ、かえって先進的な印象を与えるものだ。
 薬売りのビジネスモデルは、家庭との間に十分な信頼関係がなければ実現できない。かかりつけ薬剤師は、そのような関係を築くことができるだろうか。かかりつけ薬剤師にとって、薬売りの「紙風船」にあたるものはなにか。頂き物の紙風船は、そのうち萎んでしまった。



(2017年1月13日掲載)



前後のオピニオン

一年の疲れを癒すには
(2017年1月20日掲載)
◆四角い紙風船
(2017年1月13日掲載)
受動喫煙防止に向けた動き
(2016年12月23日掲載)