オピニオン
「検索依存症」
PCやケータイの「検索機能」なしで生活するのが難しくなってきている。例えばTVCMを見ていて気になる出演者の名前が分からないとき、製品名や2、3のキーワードを入れれば「滝川クリステル」だの「吉瀬美智子」だのと即判明するし、友人達との忘年会に使う飲食店も、「恵比寿のスペイン料理」なんてキーワードを入力すれば適当に店舗が選別される。10数年前なら人に尋ねて回ったり、店選びなら現地まで足を運んだかもしれないから便利になったのは確かだが、万事がこの調子で思考回路が短絡的になったなあと感じる昨今。データベースを外部に頼り切るから身に付いて行かない。回答はシンプルかつ即出てくるから、逡巡したり模索したりする過程が欠如する。この習慣を長く続けていたら単純バカになってしまうかも、と反省。TVの健康番組で「この食品が○○に良い」なんて放送されると翌日にはスーパーの棚から消えたりする現象を「単純だなぁ」と笑っていられない。
健康問題はネット検索で頻繁に利用される切実なものの一つだが、かつては入手が困難だった医療の専門情報が割と簡単に得られるようになった。問題はその情報の質の担保である。健康に関しては、人の不安に付け込む情報、おまじないの類いのような情報など溢れているが、本当に信用のおけるであろう情報(科学文献等)に一般の人がアクセスするのは意外に難しい。またその情報が誰によって、何を目的に出されているものか、推論する能力も必要になる。そうした力(リテラシー)は教えられたり検索したりするだけで身に付くものではない。さらに客観的データに、それぞれのケース毎の〝匙加減〟も加味されるのが現実だ。いわゆる情報の大海の中で何を命綱とするか、手がかりキーワードくらいは検索で調べても……いいだろうな。
(2012年12月28日掲載)
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◇進んで泥が被れるのか? (2013年1月11日掲載) |
◆「検索依存症」 (2012年12月28日掲載) |
◇治療理解を妨げるもの (2012年12月21日掲載) |