オピニオン

がん生存率が改善傾向「医療者と患者が治療に向かっている」

 国立がん研究センターは3月17日、がんの部位別5年相対生存率と10年相対生存率の集計を発表した。これによると、全部位全臨床病期の全がんの5年相対生存率は68・4%(前回67・9%)、10年相対生存率は57・2%(同56・4%)で、いずれも前年集計から改善傾向を示している。一方で、がん種別にデータを見ていくと、膀胱がんや甲状腺がんなどでは生存率の低下が認められ、同センターは「臨床的に意味のある変化は認められない」と説明している。
 研究班の千葉県がんセンター研究所がん予防センターの三上晴夫氏はこの結果に対し、「がん患者が増加している中で生存率が改善傾向を示しているのは、医療がよい方向に進んでいる結果だと信じている」と力説。「検査法の進歩による早期発見や、放射線治療、免疫療法、治療薬といった医療の発展がこの結果につながった」と分析した。また「生存率のデータは医療の進歩に加え、患者の必死の闘病の結果」とし、「医療者と患者、双方が治療に向かって歩んでいる姿を見せるのがこの統計の意義」と言葉を続けた。がん遺伝子パネル検査や新しい治療薬の登場など、がんを巡る医療の発展は著しい。またがん診療連携拠点病院の整備などによってがん医療の均てん化も進んでいる。一方で、がん治療においては患者の心持ちが重要になるということだ。
 三上氏は「抗がん剤投与など厳しい闘病の中で必死に生き延びる方がいる。数字からこういった姿を読み取って、奮い立っていただきたい」とこの調査に込めた思いを語った。



(2020年3月27日掲載)



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