オピニオン

ギャンブル依存症国家

 今年の秋は長雨に祟られた。読書の秋にはもってこいだが、スポーツの秋にはいささか都合が悪い(食欲の秋にはあまり関係がなさそうだが)。プロ野球では、全試合屋根のない屋外球場での開催となったセントラル・リーグのクライマックスシリーズの試合が、もろに雨の影響を受け、第1ステージの甲子園球場でのゲームなどは、見ていて泥仕合という皮肉を思い浮かべるほど悲惨な有様だった。
 雨のスポーツイベントで個人的に真っ先に思い浮かぶのは、遡ること四半世紀以上も昔の競馬のビッグレース。土砂降りの雨の中行われた秋の天皇賞、ドロドロの不良馬場の東京競馬場のゴールを圧倒的な強さで駆け抜けたのは、当時、人気、実力ともに絶頂にあった武豊騎手を背にした1番人気の馬。ところがレース後の審議で、他馬の進路を妨害したと判定され18着に降着、2着馬が繰り上がり優勝となった。競馬の最高峰であるGⅠレース史上初の1着降着で、何とも後味の悪い結末となったのだが、2着馬から買っていた筆者はひそかにほくそ笑んだものである。だから競馬はやめられない、とか何とか腹の底で呟きながら(余談だが今年の秋の天皇賞も同じ不良馬場で行われ、またも1番人気を背負った武豊騎手が、歌手の北島三郎氏の所有馬を見事、優勝に導き、雪辱を果たした)。
 厚労省が先に発表した調査結果によると、国内でギャンブル依存症の疑いのある人は約320万人にのぼり、諸外国に比べても多いという。筆者のように1度でも味をしめた人間などは要注意だろうが、どうも日本人は根がギャンブル好きのようである。何しろ一国のトップたる総理大臣にしてからが、理由もはっきりしないまま、「いまなら勝てる」とばかり衆院解散のギャンブルに打って出たかと思うと、対する野党第1党も、生まれたての新党との合流に起死回生の逆転を賭けて対抗するという、いずれ運任せの大博打が国家レベルで繰り広げられるお国柄なのだから。こんなことで、本当にカジノ解禁して大丈夫なんですかねえとようやく顔を覗かせたお天道様を拝みながら憂う秋の日である。



(2017年11月3日掲載)



前後のオピニオン

広がりつつある“減酒”
(2017年11月10日掲載)
◆ギャンブル依存症国家
(2017年11月3日掲載)
ザ・衆院選
(2017年10月27日掲載)