オピニオン
情報を届ける者の責務
報道という仕事に携わっている際に、留意しなくてはならないこと――それは「情報」を、できるだけ多くの「必要としている相手」へ正確に届ける、ということだ。もちろん報道側が情報を送りたいターゲットの所在が明らかであれば、それなりの手法をもって情報を届けるのは難しくない。だが、こちらの想定したターゲットの外にいるかもしれない「情報を必要としている人」の存在も忘れてはならない。またターゲットは明確でありながら、何らかの阻害要因によって目的に届かない場合も考えられる。
要は情報を「マッチングする」ということだ。マッチングが上手く行われなければ、文字通り命取りになることすらある。
昨年末のスマトラ沖地震に際し、ハワイ・ホノルルの太平洋津波警報センターはその直後から津波の危険を察知し警戒を発していた。しかしインド洋において津波は稀な現象であり、それを察知するシステムも、危険地域にいる人々に警報を出すシステムもなかった。ホノルルで発生した「警戒情報」が、必要であるはずだったインド洋沿岸各地に届かなかった。その結果、甚大な被害を発生させるに至ったのである。
事がここまで重大なものでないにしても、我々は日々、情報の伝達に心配りをする必要がある。「情報」は、ただ流れるがままに任せていては不十分だ。ターゲットに「気づかせる工夫」「見せる工夫」も必要になるだろうし、発信のタイミングも重要となる。とりわけ医薬品の安全性情報など生命・健康に関わる情報をナビゲートする場合、「情報の扱い方」に関する責務は重大である。
(2005年3月25日掲載)
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◇情報化時代の情報提供のあり方 (2005年4月1日掲載) |
◆情報を届ける者の責務 (2005年3月25日掲載) |
◇「個人情報保護法」が追い風に (2005年3月18日掲載) |