オピニオン

砂上の楼閣

 「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」では、「医薬品の安定供給」を確保する観点から、価格交渉の段階から別枠として単品単価交渉を行うよう求めている医薬品がある。“特に医療上の必要性の高い医薬品”がこれにあたるが、「血液製剤」もここに含まれている。
 「血液製剤」をめぐっては、3月3日の薬事審議会血液事業部会において、2025年度の血液製剤の需給計画案が了承された。審議においては、委員から、事業継続や安定供給の観点から、血液製剤やその基となる原料血漿の価格の低さを懸念する声が続出した。血液製剤の薬価は、原価計算ではぎりぎりマイナスになっていないものの、設備投資や安全対策などを考えると事業単独での継続は厳しい状況。原料血漿を血液製剤の製造販売業者に配分する際の標準価格は、「凝固因子製剤用」1万2210円/L、「その他の分画用」1万1180円/Lと据置かれたが、日赤が原価を基に算出した価格よりもそれぞれ1500円程度低くなっており、輸血用血液製剤の利益を回さなければ維持できない形となっている。
 血液製剤は、献血という多くの人の善意によって成り立っている。血液製剤の利用者からすれば安価なのはありがたいが、コロナの経験でもわかる通り、国内で安定供給が難しくなる可能性があるのであれば話は別ではないか。我が国の血液産業が砂上の楼閣とならないよう、十分な手当てが必要だ。



(2025年3月21日掲載)



前後のオピニオン

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(2025年3月28日掲載)
◆砂上の楼閣
(2025年3月21日掲載)
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(2025年3月14日掲載)