オピニオン

切り取り

 東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が2月12日、女性蔑視発言の責任を取り、会長職を辞任した。その際、発言の「切り取り」が意図的な報道だったのではないかと指摘されている。
 記者の立場から言えば「切り取り」は記者の仕事である。長い発言のうち主旨は何なのか、また発言に問題はないのかを「切り取る」ことでわかりやすく記事にする。切り取らなければ、相手が何を主張しているのかを伝えられないし、問題発言も指摘できない。つまり「切り取り」は、内容を明確化する手法なのだ。今回の件も、問題点を「切り取った」からこそ、世論が動いた。そういう意味でいえば、上手な切り取りであったと言える。
 もちろん、問題となる「切り取り」もある。例えば「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかりますと言われるが、私はそうは思わない」という発言なのに「時間がかかります」で切ってしまえば、これはアウトである(残念ながら、そういう切り取りも一部で見られる)。また、発言の全体を見れば、そういう意味で言っているのではないことが明確な場合もある。そういう間違った切り取りは批判されるべきであろう。まあ今回の場合は「テレビがあるからやりにくい」とか「あまりいうと新聞に悪口かかれる」とか、自身も問題発言だとわかっていながら言っているので「意図的な報道」には当たらないだろう。それはそれとして、厚顔無恥に役職に居座る人が目立つなか、辞任という決断をしたことは評価したい。



(2021年2月26日掲載)



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(2021年2月26日掲載)
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