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インドの医薬品市場の強み

 昨今の目覚しい経済成長から国際的関心が富に高まっている「BRICs」(ブラジル、ロシア、インド、中国)。将来的には日本よりも大きな経済大国になると予想されているが、その原動力として一翼を担うとされているのが医薬品産業の成長だ。成長振りでは4カ国の中では中国が台頭しているが、中国に並んで潜在力の高さをもつ市場として今注目されているのがインドだ。
 経済産業省がこのほど発表した調査報告書によると、2002年で市場規模約60億ドル、世界13位の大きな産業に成長したインドの医薬品産業は、5年後には売上高、利益が各々13%、17%増加すると予想している。
 インドでは医薬品を買える層が限られているので市場として魅力は乏しいのではとの印象を受けるが、医薬品の生産額に占める最終製品の割合は約80%を占め、その大半が国内消費。インドにおける上位中所得者層は僅か12%程度だが、もしこの12%が医薬品の購買層と仮定すると、日本人口に匹敵する1.24億人の巨大な医薬品市場が存在することになる。加えて、大学生の数の多さによる豊富な人材の存在と生産コスト、開発コストが低いうえ、今年1月から物質特許を認める新特許法を施行し、先進諸国と同様にコピー製品を製造・販売することが法的に出来なくなったことも、インドの医薬品産業の成長に弾みをつけているという。
 インドには欧米の製薬企業のほとんどが進出し、その数は01年現在で420件に及ぶのに対し、日系企業はエーザイ、日本ケミファ等が動き始めたばかりで、欧米と比べて出足しは鈍い。しかし、日本政府の薬剤費抑制策で国内市場の先行きが不透明な中、日系企業にとって収益力アップにインド市場は、今後無視できないものになるのは間違いない。



(2005年6月17日掲載)



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(2005年6月24日掲載)
◆インドの医薬品市場の強み
(2005年6月17日掲載)
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(2005年6月10日掲載)