オピニオン

会えないコミュニケーションの行間

 オンラインで行われる一連の機能には慣れてきたものの、「では終わります」でオフラインになった瞬間の、たちまち現実世界に引き戻されるような違和感にはまだ慣れない。それまで共有していた時間を一気に断ち切られ、取り残されたような気持ちになる。オンライン機能が便利であることは大前提だが、一方で、どこまでいっても埋められない壁があると感じるのも確かだ。
 SNS上で、ある医師が「オンラインでの面会になってから、MRさんからの無理な頼み事が増えたよう思う」と発信しているのを見た。オンラインでのやりとりにおいて、距離感を問わずに踏み込んでくる人が増えた、という趣旨だったと思う。また、知り合いが「テレワークになってから社内トラブルが増えた」とこぼしていた。「メールでのやりとりにおいて、行間を伝えきれない人、読み取れない人が多いことが分かった」とし、「直接話せばすぐ解決することなのに」と話していた。
 コロナ禍を機に、デジタルの活用はさらに増えていくだろう。実際に、製薬企業においてもAIを活用した情報提供活動への参入は増えている。「会えないコミュニケーション」において、コミュニケーションの狭間に散りばめられる「匂い」「行間」「余韻」の領域にどこまで踏み込めるか。デジタルの恩恵に預かっているばかりじゃなく、自分の頭で考えていかなければいけない、と考えあぐね、シンとした部屋の中で、「“さようなら”のあとの帰り道は、大事な余韻だったのだなぁ」と思う。



(2020年9月25日掲載)



前後のオピニオン

デジタルは進むのか
(2020年10月2日掲載)
◆会えないコミュニケーションの行間
(2020年9月25日掲載)
薬剤師の卒後臨床研修
(2020年9月18日掲載)