オピニオン

こいのぼりに思う

 「子供は1人じゃまずいな。あと2匹加えたらどうか」--小泉純一郎首相は4月末、首相官邸の玄関前に掲げられた親子3匹のこいのぼりの前で語ったという。
 2003年の合計特殊出生率は1.29と前年の1.32からさらに低下。この数字が発表されたのは、国民にとって痛みを伴う年金法案が国会で可決された直後で、年金収支の将来展望のベースとなった合計特殊出生率の将来想定値以下だったことから、大きな騒ぎとなったことは記憶に新しい。
 この春、「次世代育成支援対策推進法」が施行された。この法律では、国や地方公共団体による取組だけでなく、301人以上の労働者を雇用する事業主に、「○○年までに育児休業取得率を男性◎%、女性△%とする」といった行動計画を策定し、届出ることを義務付けている。ただ、男性社員が育児休業を取った企業に国が奨励金を支払う助成制度の利用は、03年度の導入以来、2年間で1社もなく、04年度でこの制度は廃止されている。03年度の男性の育休取得率は0.44%と、実態は厳しい。
 「次世代育成支援対策推進法」に、より実効性を持たせるためには努力義務となっている労働者301人未満の事業主への対応強化が欠かせない。また、多様就業型ワークシェアリングの普及促進、パートタイム労働者の均衡処遇の普及・社会保険の適用拡大、テレワークの推進といった働き方を変える政策の実施が必要だろう。ただ、その際、少子化対策としての効果だけでなく、多様な就業状況が企業の生産性や従業員のモチベーションにどのように影響するか、といった副効能のエビデンスも示さなければ、企業の理解は得られないだろう。こどもの日に向け、これまでの少子化対策への反省をこめて考えた。



(2005年5月6日掲載)



前後のオピニオン

「グローバル化」
(2005年5月13日掲載)
◆こいのぼりに思う
(2005年5月6日掲載)
医師免許更新制と日医
(2005年4月22日掲載)