オピニオン

国内製薬企業再編の背景に関する
考察

 三共と第一製薬が今年10月に持ち株会社を設立し経営統合する。昨年末から、住友製薬と大日本製薬、帝国臓器とグレラン製薬と、再編が進み始めた背景には2006年の商法改正がある。改正で外資による株式交換方式の企業の合併・買収が可能となることから、外資による買収攻勢が予想されている。これに対抗するには時価総額を高めなければならない。その1つの策が規模の拡大だ。しかし、世界トップのファイザーの時価総額19兆円超に対して、国内トップの武田薬品で4兆4500億円とファイザーの4分の1に過ぎず、各社とも安泰と言うわけではない。
 巨額の研究開発費と市場の競争激化も再編を促している。研究開発費は技術の高度化により膨らむ一方で、1品目あたり数百億円に達する。開発投資を回収すべく世界各地で熾烈な販売競争が繰り広げられている。国内市場は、薬価引き下げで停滞しているが、ファイザーはMR3000人超という従来の国内トップレベルの倍の規模を擁し、業績を伸ばしている。国内の営業力が弱いと、研究開発費を捻出するのが困難になるのに加え、他社からの製品導入契約も結べなくなる。このため、各社ともMR増員の必要性に迫られている。
 今年4月には改正薬事法の完全施行が控えている。医薬品の承認制度が、製造承認から販売承認に変わる。これにより製薬企業を評価する軸として新薬開発力と販売力が、ますます重視されることになる。



(2005年3月4日掲載)



前後のオピニオン

「株」の話題は尽きない
(2005年3月11日掲載)
◆国内製薬企業再編の背景に関する 考察
(2005年3月4日掲載)
花粉症治療で見る 患者負担の日本とアメリカの事情
(2005年2月25日掲載)