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境界型とはいえ抗糖尿病薬をのみだして早や一年、食事と運動療法に熱心に取り組み、なんとか悪化させずにいる。 だが、最近新たに主治医から指摘されだしたのが血清総コレステロール値の異常高。基準値上限を2割も超えて追加で処方箋をきられた。服薬しだしたが、下痢ぎみになったりどうも体にしっくりこないので中断している。 そこへ私にとっては大変歓迎的なデータが発表された。 日本の医療は、そもそもは西洋医学を基盤としてでき上がっており、循環器疾患の発症理論についても当然の如く、脂質異常の関与が重要と考えられている。つまり、動物性脂肪の摂り過ぎにより血清コレステロールが高くなり、それが血管に溜まって動脈硬化を引き起こし、脳卒中や心筋梗塞を発症させると考えられている。 だが、今回発表されたデータは、これとは全く異質であり、極めてセンセーショナルだ。秋田に於ける病理・疫学的研究によるもので、欧米のいわゆる“コレステロール学説”では理解しがたい実態の存在することが次々と発見されている。 つまり、脳卒中による死亡者の徹底した解剖により、低コレステロール血症でありながら発症が認められたり、死者の脳動脈のいずれの部位にもコレステロールをはじめとする脂質の沈着が認められないなど、多くの矛盾点が明らかにされた。 いわゆる粥状動脈硬化とは直接関連のないことが判明したことは実に大きなインパクトがある。結果、我が国の循環器疾患の発症要因は、我が国特有の生活習慣を背景として発症する高血圧と脳出血こそが原点にあるという考え方が引きだされたのである。 こうなると問題になるのは、現行の欧米コレステロール学説に基づいた検査数値判定の取り扱いである。早急に専門学会として責任ある考え方をまとめる義務がある。 よけいなことだが、専門医の意見をまとめ上げていく方法に「デルファイ法」というのがある。 そもそもは「高齢者に不適切な薬剤処方」の選出に当たって有名になった「ビアーズ基準」から発表してきたものであり、薬剤の有害性と有益性を比較検討する作業方法である。 多くの専門医がそれぞれ意見をだし合い、それを相互に参照し、再び意見をだし合う。この作業を繰り返しつつ意見を収斂させていく手法である。 コレステロールよ、君の立場はどうなる?
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