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近代文明は我々に限りなく大きな利便性をもたらしたが、一方で、精神衛生面では多くの良からぬ影響を及ぼした。 その最も大きな代表例がインターネット。利用する者、或いは利用する時間は急伸する一方で、一日中、中には睡眠時間を極端に削ってまでネットと格闘、日常生活に支障をきたす例が多くみられる。 こうなると、まさに疾病そのもの、「インターネット依存症(仮称)」として、最近、注目を浴びている。臨床現場では「適応障害」「人格解離」「被害妄想」等の症状がみられるという。 人間ナマで生きていて、自分も、そして周囲も一番始末に困るのが精神疾患である。とにかく、人間誰しも理性と尊厳があっての存在であり、それなくしてはもう人間ではない。 思春期を過ぎ、ハタチを過ぎ、やれやれと思っても、突然、精神病は発症することがある。疫学研究で、その特徴は、既に思春期時代にみられるという。 精神病としては未病状態にあるが、幻覚や妄想等の臨床閾値以下の精神病様症状を体験することが、いずれ本格化するリスクとして極めて大きいという。 驚くのは、思春期世代の未病体験者が10人に1人いるということ。(日本社会精神医学会・大規模疫学研究結果)こんな高率で、もし次々と精神病患者に本格移行するようならもう正常な社会は存続不可能だ。 三重県の中学生5千名余の無記名調査で、精神病様体験者が15%認められ、長崎県の同様調査でも16%に認められた。高知県では高校生(1万名余)にも調査され、13%に認められた。 体験の内容としては、幻聴が最も多く、「ほかの人に聞こえない声が聞こえる」とか、「TVやラジオから自分だけにメッセージが送られてきた」とかの訴えがある。 精神病への患者化は、現実にははるかに低率になるにしても、とにかく芽の小さいうちに発症予防の手は打たねばならない。 そこで「現在の精神的不調を誰に相談しているか」の問いに、一番は友人。だが、なかなか専門的に問題解決するのは難しく、養護教諭等への期待感が高まる。 いずれにしろ、若者の周囲にいる人たちが集中的な啓発なり研修なりを実施しなければ……、それが文明を維持する重大なキーポイントになると思うが。
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