オピニオン

「かわいい」は色褪せない

 先日、世田谷文学館で開催されていた「原田治展『かわいい』の発見」に足を運んだ。原田治の名を知らずとも、例えばカルビー「ポテトチップス」のキャラクター、崎陽軒「シウマイ」の醤油入れ(ひょうちゃん)などは誰もが必ず目にしたことがあるはずだ。簡潔な描線と爽やかな色彩で描かれたキャラクターたちは、日本の「かわいい」文化に多大な影響を与えた。
 展示室に入ると、20代前半から50代くらいの男女まで、かなり幅広い年代のお客さんが訪れており、世代を超えて多くのファンがいることを実感した。今回の展示では、氏の代名詞である「オサムグッズ」のイメージとはまったく異なるテイストの作品も多数展示されており、 大変面白かった。例えば、氏が1980年代に手掛けた雑誌の表紙や挿絵では、実に多彩なタッチのイラストを描いている。プライベートで制作したアート作品なども見応えがあり、その多彩な才能に驚かされた。
 展示室に書かれた氏の「可愛い」の表現方法について、「終始一貫してぼくが考えた『可愛い』の表現方法は、明るく、屈託が無く、健康的な表情であること。そこ5%ほどの淋しさや切なさを隠し味のように加味するというものでした」とあったが、作品を見るとその意味が良く分かる。「かわいい」は性別や年代を超えて色褪せないものだと改めて実感した。
 それにしても今年の世田谷文学館の企画展は、今回がイラストレーターの原田治氏、前回が漫画家の石ノ森章太郎氏、その前が絵本作家のヒグチユウコ氏と、多様なジャンルで構成されていて、非常に見応えがある。次回の企画展は小松左京氏とのことで、楽しみにしている。



(2019年9月27日掲載)



前後のオピニオン

消費税増税、20年度改定、財務省
(2019年10月11日掲載)
◆「かわいい」は色褪せない
(2019年9月27日掲載)
加藤勝信厚労相の再登板
(2019年9月20日掲載)