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イスラエルとアラブ諸国との終わりなき戦争状態が今日も続く。人口比で圧倒的に非力なイスラエルは、兵力の損失を避けるべく「無人兵器」を開発した。 敵陣深く侵入し、時には情報収集を、そして時には爆発させて、大いなる脅威を与えている。 転じて医学の世界でも、同様な科学進化が展開されている。 管のない全くフリーな状態のカプセル内視鏡が登場し、治療現場でどんどん活用されるようになった。大変便利なシロモノには違いないが、更に一層の使い易さを目ざして改良が加えられた。 これまでの問題は、3~4秒で食堂を通過してしまうこと、それに胃の中に入るや否や即胃壁下部にまで落ちこんでしまう欠点、つまり、移動が早過ぎ満足な映像が撮れない不満があった。 これに対して、独・英の技術者による共同研究で、食道の途中でストップさせたり、胃内部で自在に移動させ回転させながらカメラアングルを四方八方に調整できるシステムを 考案した。 これにより、特に食道と胃の接合部の正確な検査が可能となり大きな意義を発揮する。つまり、噴門部の括約筋が適切に機能していないと、胃酸が食道に逆流し胸やけが惹起されてしまう。これが長引くと食道がんの原因にもなりやすく、この位置は大変重要なポイントなのだ。 自由にコントロールできるようになったテクニックもとはマグネットの利用である。私はマジック愛好家であるが、そのタネには、いまや幼児でも知っているマグネットがよく使用される。 特殊に工夫されたマグネットをドクターが手に持ち、患者の体に当てながら自由自在にカプセル内視鏡を操作し情報を手に入れる。 ドクターにはマジック愛好家が多勢居るが、ドクターの手の先も、見方をかえればマジシャンのそれと同類と言ってよい。 そんなドクターの中で一段と秀でた者が「神の手を持つ男」の称号を手にし、脳でも心臓でも難しい手術を軽々とこなすのだ。 その神業的テクニックもさることながら、成功の影には特殊な手術器具の開発や代行血管等が必ずといってよいほど工夫されている。おそらく、こんなスーパードクターは、マジックの方向に進んでいても超一流のマジシャンになれたに相異ない。
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